アジアフォーカスにて「至上の掟」「神に誓って」

昨日「アジアフォーカス2008福岡国際映画祭」にて2本鑑賞。
その2本、こんな映画に出会えるから映画を見続けているのだと、思えるようなすばらしい作品でした。

「至上の掟」
古い村の因習に縛られる若い二人と、自分を探すために一人クルーザーで航海する大学教授が出会い、新たな人生を見つけるまでを、イスタンブールの美しい自然と、「太陽がいっぱい」をも彷彿とさせるサスペンスの要素も盛り込んで見せる2007年のトルコ映画界で「最も素晴らしい映画のひとつ」と評された作品。

その村の掟とは純潔を亡くした娘は生きていくことはできない、というもの。この映画の娘は何者かに暴行され、死ぬことを強要されます。個人の命よりも家族の対面を気にかける古い因習が今も残っていている村、それを命令するのは男です。このような封建的な村がある一方ではクルーザーを持つほどの裕福な大学教授が存在するトルコ社会。

初めて知るトルコの人々のさまざまな暮らし。そのカルチャーショックとともに初めて見るトルコ映画の質の高さに驚かされました。しかしなんという映像の美しさ、そして思わぬ展開を見せるストーリーの面白さ。
まだ見ぬ国にいったいどんな素晴らしい映画があるのかと、ますますいろんな国の映画が見たくなりました。

「神に誓って」
そしてパキスタンの映画。
9.11以後パキスタンのイスラム教徒が陥った困難な状況を、ふたつの家族の出来事を通して訴えた堂々たる社会派作品。
ミュージシャンでありながら、コンサートを妨害されたことからイスラム原理主義に接近し、タリバンとして軍事訓練に参加する弟、音楽の道を究めようとアメリカに留学した兄は9.11の犯人グループの疑いでアメリカ当局から捕らえられひどい尋問を受ける。パキスタン人の父とイギリス人の母を持つ娘は無理矢理にアフガニスタンの村につれて行かれだまされるようにしてパキスタン人のいとこと結婚させられる。

イスラム教のこと、タリバンのこと、パキスタンの社会のこと、アメリカの国策に翻弄されるパキスタンやアフガニスタンの情勢など多くのことを伝えてくる映画でした。

この映画の始まりに監督の挨拶があり、終映後にもティーチインがありました。
監督はこの映画はパキスタンの人の啓蒙のためにつくったから、説明的だし、芸術的ではない、と挨拶されましたが、社会的な問題をつきつけながらもりっぱにエンターテイメントしていて素晴らしい作品でした。
商業的には難しい作品だというので監督個人が資金を工面して製作されたそうですが、学校単位で鑑賞に訪れたり脚本が大学の講義に使われたりと、予想外のいい成績をおさめているとのことで、この映画は本当に日本でも劇場公開してほしいものだと思います。

このアジアファーカス映画祭の観客賞も受賞しました。

昨日は1本目を見て会場を出たところで「神に誓って」を見にきた福岡の映画友にばったり会い、夕方からの試写会の予定を急遽この映画に変更しました。
持つべきものは友です。彼女のおかげでこの映画に出会うことができました。
アジアフォーカスで私が見れたのはこの2本でしたがかなりベストな選択だったと思います。

(2008/9/17・Wed.ソラリアシネマ)






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